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2011_02_21「グローバル化の実相2:不均一な構造」

2011年02月23日 · コメント(0) · 未分類

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 森 健の『ニュースを解く読書』
     — Dive Into Books with News — 2011/02/21 vol.11

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<< CONTENTS >>
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【1】今週のテーマ >>「グローバル化の実相2:不均一な構造」
【2】今週の1冊    >>『自由貿易は、民主主義を滅ぼす』
  <書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
  <版元による「内容紹介」の引用>
  <目次>
  <要約>
【3】解説と雑感 >>「スケールフリー・ネットワークという暴力的な構造」
【4】おまけ 
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【1】今週のテーマ「グローバル化の実相2:不均一な構造」
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 グローバル化の実相というテーマのもと、前回はBOP=Base Of Pyramid
と呼ばれる貧困層へのビジネスを紹介した。ビジネスの現場はもちろんそれ
だけではないが、貧困層までとらえようとする現状はある意味では、グロー
バルに展開する資本主義というシステムの終着点でもある。そう考えると、
「終わりのはじまり」がはじまったとも言え、この趨勢は非常に興味深い。
 そこで今回はそんな世界の変化をもう少し俯瞰で読み解きたい。

 現在の資本主義のあり方に疑問が広がったのは2007~2008年の米国発
の金融危機、世界的経済危機で、リーマン・ショック直後には「資本主義の
終焉」的な言葉が世界的に語られるようになった。
 上がり続ける相場などないことは過去の歴史が教えるところでもあり、そ
れをもって、スーザン・ストレンジが『カジノ資本主義』と批判したのが、
80年代半ばのことだ。同書の著者は統計的な手法よりもジャーナリスト的
な(若干情緒的な)スタイルで「誰かがババを引く」市場のあり方を批判し
たが、それ以前にも経済学者で市場原理の資本主義の欠陥を指摘した人もい
た。ハイマン・ミンスキー。彼については、経済産業省出身で現在京都大学
の助教を務める中野剛志氏が『恐慌の黙示録』で詳しく記している。

 中野氏はグローバルに資本主義、自由経済が拡大する中で、その問題と課
題について盛んに警鐘を鳴らしており、最近ではTPPを明確に誤りだと主張
していることで知られている。これは経済産業省という彼の所属組織を考え
ると非常に違和感があるが(本人もそれは意識していることは著書で述べて
いる)、彼の理論的基盤はかなり強固であり、その主張には説得力がある。
 その中野氏と同様、世界では異端視されながらも、現在の政治と経済に問
題があることを訴えている学者がいる。フランスの人口学者、エマニュエル
・トッドだ。

 トッドの主張は従来の経済が長く基盤としてきた前提を疑うことから始ま
っている。それは今回紹介する著書のタイトルに象徴的に表現されている。

『自由貿易は、民主主義を滅ぼす』

 自由貿易は20世紀後半から現在まで世界経済を支配的に覆っている仕組
みであり、考え方だ。第二次大戦後、国家間で関税を調整する会合がもたれ、
GATT(関税および貿易に関する一般協定)がもたれたのが1948年。その
後、東京ラウンドやウルグアイ・ラウンドなど数回のラウンド(通商交渉)
が行われたのち、1995年にWTO(世界貿易機関)に引き継がれた。
 現在のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)もこうした自由貿易を促進
するための流れで、それ以前からある二国間協定のFTA(自由貿易協定)、
EPA(経済連携協定)を超えた多国間の経済・貿易協定だ。

 だが、前出の中野氏も主張するように、包括的な協定であるTPPが締結
されれば、日本はさらなる経済的打撃を受けることはほぼ確実だ。
 経団連など輸入や輸出に多くを軸足を置く経済界はTPPに賛成している
が、それはなによりも関税の撤廃という項目があるためだ。部材の輸入、
最終プロダクトの輸出などで関税がかけられるよりは、ないほうが企業的
には利益が出しやすくなる。
 一方で、778%など高い関税率をかけられて保護されているコメなど農
業では関税率が撤廃されれば、安い農作物が輸入されることになり、日本
の農家が相当な打撃を受けることが予想されている。
 また、農業のみならず、価格の安い商品が入ってくることで、消費者へ
の利益もあるものの少なくない産業が打撃を受けるほか、長く続くデフレ
基調がますます強くなるとも目されている。そうなれば、内需は一層悪化
するだろう。
 要は、自由貿易を強く推し進めることは必ずしもその国の経済にとって
利益とはならず、そればかりか、害悪にもなるという見方だ。

 今回紹介する『自由貿易は、民主主義を滅ぼす』というのは、経済マター
から政治マターに展開されたタイトルだが、その論理構成と背景事情は決し
て特殊なものではない。
 筆者もある面では著者トッドに共感する部分が少なくなく(全面的にでは
ないが)、その理論的支柱はたいへん参考になる。
 本来トッドを紹介するときには、代表的著作である『帝国以後』や『デモ
クラシー以後」などがふさわしいだろうが、本書は講演録や対談が主軸であ
り、読者にとっても(もちろん筆者にとっても)読みやすいという利点があ
る。基本的には2009年に10日間ほど来日した際に行われた講演や対談が中
心で、本書の中でテーマは何度も繰り返されている。また、松原隆一郎や辻
井喬などの論客と意見を戦わせるところもあり、彼の知見を叩く中で見えて
くるものもある。

 いずれにしても、トッドが問題視しているのはグローバリズムとその背景
にある巨大化する資本、およびミニマムに保護的、貴族的になる資本家層の
存在(階層化への懸念)、個人主義がはびこるなかで従来的なイデオロギー
もなくなり、政治がポピュリズム(大衆迎合)と衆愚によって無能な指導者
が礼賛されていく中で、民主主義も堕ちていくという構造そのものである。
 そこで指摘されている懸念は、筆者もかねて問題視していることであり、
過去にも記していることでもある。

 おそらくそれは経済の問題も政治の問題も客観的に見れば、スケールの問
題、量的な増大が質を変えるという側面もあると筆者は思う。科学で言うと
ころの相転移の問題。それは後半の解説で言及したい。

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