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『つなみ 被災地の子どもたちの作文集(完全版)』刊行しました。

2012年06月16日 · コメント(2) · メディア, 自著

tsunami_kanzenban

 6月13日(水)、新刊が出ました。
『つなみ 被災地の子どもたちの作文集(完全版)』
 昨年6月に出た月刊文藝春秋8月号臨時増刊『つなみ 被災地の子どもたち80人の作文集』を基にした「完全版」です。

 完全版とは何ぞや、前に出たものと何が違うのか、という声があると思うので、先に答えておきます。
 刊行理由は2つありますが、一番大きいのは、昨年出した作文集『つなみ』は「雑誌」(ムック)の扱いだったため、もう書店に置いてもらうことができない時期だったためです。
 ムックは書店に置ける時期に限りがあり、ムックの『つなみ』がもうその時期が限界でした。にもかかわらず、いまも同書への注文は寄せられている。そこで早い時期から、「書籍」として出し直さねばという話はありました。書籍であれば書店で置ける時期に問題はありませんし、注文すれば日本全国手に入れることができます(ムック『つなみ』では近隣の書店で、なかなか入手できないという声が大変多かったのです)。

 もう一つの理由は、新たに「福島編」を入れたことです。
 昨年の震災後、この作文取材では福島はあえて外していました。岩手と宮城は津波による被害が目に見えるかたちで、つまり、子どもにもわかるかたちで被害がありましたが、福島では(もちろん津波と地震の被害もあったのは承知していましたが)、避難した多くの理由はむしろ原発事故のほうが大きいものでした。原子力発電所という高度な仕組みに放射線という目に見えない存在。それを概念的に理解するのは子どもには難しいだろうと思えましたし、その時点で「なぜ」自分たちが避難しているのを理解し、文字にするのはなおさら困難だろうとも思いました。そこで福島に関しては時間が経ってからやろうと思っていたのです。
 そして、今年の年明けすぐから、まもなく1年という時期を見越して、双葉郡の5町の子どもたちに依頼して回りました。その結果、2月から3月にかけて30人が作文を寄せてくれた。その30人の作文を、この完全版に収録することができました。
 それをもって、岩手、宮城、福島、東北3県の子どもたちの作文は計115本に達しました。
 それを再編集したのが、本書になるわけです。

 もう少し続けます。

 今回の「まえがき」にも書いたのですが、昨年出したムック『つなみ』は本当に反響の大きな作品でした。
 テレビやラジオ、新聞などメディアの取り上げも大変多かったばかりか、防災イベント、朗読会、クラスや学校での課題図書、文化祭での活用、学級通信などへの引用、など学校での使用許可の依頼が数百件と本当に大変な数になりました。私宛ての依頼だけでも数十あり、日本国内の読者、はてはイギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなど海外の読者からも翻訳の申し出がありました。また、読んだ読者から、名前の出ていた学校と著者の子ども宛てに感想文や贈り物が贈られた例も数十単位でありました。加えて言えば、防災副読本や教科書のたぐいへの引用許可すら数点ありました。
 要は、単に部数が多く出たというような話ではなく、読者からの反応や反響がダイレクトに表れたという稀な作品だったのです。それは大人ももちろんではあるのですが、それ以上に、子どもの読者からのものが鮮烈でした。

 当時、作文を書いた子どもの中には、「津波のすごさを知らない日本の子どもが読んで、わかってもらえたら」と語っていた子が何人かいました。まさにそのとおりに、多くの同年代の他の地域の子どもたちが読んで胸を動かされていたのです。途中、そういう言葉を聞いたときに、「あぁ、そんなことになったら、いいだろうなぁ」などと理想的に考えていたのですが、それは夢ではなく、現実に起きていたのです。
 現に、小島慶子さんのラジオ番組に出させていただいたとき、小島さんが「これ、うちの子が書いたんですよ」と目を丸くして感想文を見せてくれたのですが、それも親に言われたものではなく、自分の意志で書いたものでした。企画、取材にあたった人間にとって、これは本当に驚きであり、喜びでした。

 おそらくそこまで大きな力になった一因には、原稿用紙そのままの書き文字が大きかったのではないかと思っています。
 もともと人は自分と同年代の人は意識しがちなものです。子どもも同様で、いろんな年齢の子どもがいたとしても一番気になったり、仲良くなるのは同い年の子どもです。この作文集には、いろんな学年の子どもが体験談を寄せてくれましたが、そこに自分と同年代の子が書いていれば、きっと気になったはずです。お世辞にもうまいとは言えない書き文字で、汚くなった原稿用紙に率直に自身の体験や思いを載せた。読者となった子どもたちは、その原稿用紙を目にしたときに、テレビや活字などメディアとは別種の強烈なリアリティを感じたと思うのです。まるでクラスで横にいるクラスメートが書いたような作文が生々しい言葉で綴られている。そこに激しい津波映像などとは違う共感、反応をもったのではないかと思うのです。
 もちろん活字になった作文にも胸を動かすものも多々あります。その上で、やはり、書き文字という視覚的なインパクト、共感はもっと強かったのではないかと。
 その意味で、本書はぜひ1年が過ぎた今も強い力を持っていますし、長く読み継がれるだけの意義と価値をもっているのだと思います。

 昨年すでにムックを購入していただいた方には福島編がないことを申し訳なく思いますし、再び「ぜひ購入を」とは正直言いにくいです。
 ですが、ぜひ書店で足を運ばれた際には、この福島編にぜひ目を通していただければと思っています。突然故郷を離れることになり、そのまま長期間帰れなくなってしまった、かの地の子どもたち。彼らが何を体験し、何を思っているのか。ぜひ彼らの書き文字の原稿用紙からじっくり読んでもらえたらと思います。そして彼らが「書いた」ことだけでなく、彼らが「書かなかった」ことにも思いを馳せていただければと思います。そこに考えを広げたときに、彼らの苦しみがなおさら立ち上がってくると思います。

 著者としては、拙著『「つなみ」の子どもたち』もお読みいただけたらなぁとは思いますが、子どもたちの作文集は今回「福島編」という大きな追加もあり(他にも、福島レポート、スイスツアーレポートなども追加)、ぜひお手にとって読んでいただけたらと思っています。

 よろしくお願いいたします。

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コメント(2)

  • 久住規子

    はじめまして
    本のご紹介をありがとうございます。
    是非!!!
    購入させてください。
    よろしくお願いいたします。
    久住規子

  • MightyDV

    猪瀬副知事のご紹介で知りました。
    南相馬に向かう道中に是非読ませていただきます。