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第22回小学館ノンフィクション大賞の大賞を受賞しました。

 すっかり放置状態にしていたら、2年あまり経っていました。
 先日、7月31日のことですが、下記のとおり、第22回小学館ノンフィクション大賞の大賞を受賞しました。

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毎日新聞8月1日

 この賞は未発表原稿が対象なので、まだ刊行されていませんが、応募時点でのタイトルは「小倉昌男 祈りと経営」。自分にとって書籍原稿としては初の評伝で、ヤマト運輸の経営者、故小倉昌男さんを書きました。

 受賞決定の連絡のあと、選考会が行われていたホテルオークラに挨拶に行きました。
 着いて早々に事務局の方から告げられたのは、同賞の歴史でも記憶にないくらい、つまり初めてに近いほど選考は意見が一致し、5人の選考委員の「満場一致」だったのとのこと。5人5点、25点満点で25点。
 椎名誠さんは小倉昌男さんは知らなかったようですが、「内容も構成もほんとうによかったのに加え、ここまで意見が一致した選考会はない」と。二宮清純さんからは「名経営者の知られざる思いに心がふるえた」と真顔で言われたうえに抱きつかれ(「え?」)、平松洋子さんには「日本の寡黙で優しい父親像に打たれ、私も自分の父親を思い出した」と涙まじりに言われて慌てました。帰り際の関川夏央さんからは「いい取材で感動した!」、高山文彦さんからは「うん、圧倒的だった。最初から安心して読めて、最後までおもしろかった」との評をいただきました。
 と記していくと、自画自賛ばかりで鼻白む気分になってしまうかと想像しますが(すみません)、とはいえ、この取材は書いた本人から言わせてもらっても、本当にいい取材だったと言えます。
 テーマはシンプルで、「なぜ小倉昌男は私財を障害者福祉につぎ込んだのか」という謎です。

 このちょっとした疑問から取材をはじめ、驚きや新たな疑問が生まれ、さらに進める。日本初の宅配インフラを全国につくりあげ、各種規制と闘って名経営者と呼ばれた小倉昌男さんですが、彼は自身の内面的な思いを公に語ることはありませんでした。例外だったのは還暦の頃からはじめた俳句で、そんな句作の仲にはそっと思いを忍ばせることもありました。
 取材を進める中で、彼が抱えていたものが次第に浮かびあがり、強く祈りを捧げるような日々だったことがわかっていきました。この取材では僕自身が驚きの連続で、センシティブな話に触れざるをえない部分もありましたが、同時に、書いて意味がある、伝える意義があると確信できた取材でした。そして、いま受賞の理由を考えると、そんな複雑な背景と秘めやかな思いがあったからこそ、強い何かを伝えられる作品にはなったのだろうと思いました。

 協力していただいた多くの人にもいい挨拶ができそうです。
 書籍としての刊行は11月頃を目指す予定ですが、もし書店に並んだ時にはぜひ読んでいただきたいと思っています。
 また時期が来たら、お知らせいたします。
http://mainichi.jp/select/news/20150801k0000m040050000c.html