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2011_02_28「グローバル化の実相3:食料争奪、食の安全保障

2011年03月01日 · コメント(0) · 未分類

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森 健の『ニュースを解く読書』
— Dive Into Books with News — 2011/02/28 vol.12

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<< CONTENTS >>
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【1】今週のテーマ >>「グローバル化の実相3:食料争奪、食の安全保障」
【2】今週の1冊    >>『ランドラッシュ 激化する世界農地争奪戦』
<書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
<版元による「内容紹介」の引用>
<目次>
<要約>
【3】解説と雑感 >>「取り返しの付かない政策:TPP」
【4】おまけ 
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【1】今週のテーマ「グローバル化の実相3:食料争奪、食の安全保障」
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いまから10年後、ビーフステーキやすき焼きは昭和時代よりもぜいたく
品になっているかもしれない。
理由は単純、食料が高騰するからだ。

2011年現在、原油と食料が高騰している。
食料の上がり方は2007~2008年の世界金融危機以前の高騰を上回る勢
いで、原油もそれに近い伸び方だ。原油の原因はチュニジア、エジプトの
政変に加え、その波がリビアまで及んだことが関係している。2008年の資
源高の際、ガソリンがリッター190円に迫りそうな時があったが、今回も
悪くすればそれくらいまで行くかもしれない。
だが、もっと気になるのは食料だ。

先週の18~19日にフランス・パリで行われた主要20カ国・地域(G20)
財務省・中央銀行総裁会議の主要テーマはまさに食糧問題だった。
昨年夏以来、世界では食料が高騰している。こちらの理由は複雑だ。
一つは世界的な干ばつによる不作がある。南米では大きな不作が続いてお
り、それによって価格が高騰している。加えて、2007年頃と同様、投機マ
ネーが入り込んでいる。
だが、今回はその時よりも複雑な要因が入りこんでいる。それが中国など
新興国の台頭だ。というのも、食糧費の高騰に一役買っているのが中国など
の取引額、取引量の増大だからだ。国家が経済成長し、中間層や富裕層が増
えることで消費が増大すると、電化製品や自動車、ブランド品などの消費が
増えるのはよく知られている。また、産業・企業側もそれを狙って、市場開
拓を狙っている。けれども、なにより市場として大きな影響があるのは、じ
つは食料だ。

すでに漁業などではその影響は数年前から出ている。「サシミ」を食べる
ようになった中国のせいで、マグロの市場価格は高騰。それ以外の各種魚も
世界の市場で日本の業者が中国に競り負けるという事態が増えている。イワ
シなどの(飼料にしていたような)安い魚でさえ、中国に買われている。
そんな一次産品の市場でさらに争いが移っているのが穀物だ。これまでど
ちらかと言えば、供給側にいた中国だったが、国内の需要が上昇したために
需要側になりだしている。そのために穀物市場が上昇しているのだ。

折しも、日本では18日、農林水産省から今後10年で食料価格が3割上昇
するという予測が発表された。要因は、やはり新興国の経済成長や人口増大
などで、小麦は24%、トウモロコシは35%、大豆は32%の上昇。さらに、
それらを飼料とする畜産の肉類はさらに高い。豚肉は32%、鶏肉は34%、
牛肉に至っては46%も上昇するとされた。
ということは、この先経済フレームに変更がなければ(いや、もっと悪い
変更はあるだろうが)2021年の牛肉は、現在100グラム900円の国産和牛
などは1300円/グラムほどになり、外食などでステーキ150グラムを食べ
ようとすれば、さほど高級店でなくとも、おそらく3500~4000円ほどに
なってしまうだろう。
おそろしい価格だ。

先のG20の話で言えば、結論から言えば、G20では何の有効な結論を出
せずに終結した。
新興国が需要増大を先進国から非難されれば、先進国(米国)は新興国
(中国)から金融の量的緩和で批判されるというやり取りだったからだ。
食料問題はペンディングされたままになった。
こうした事態が今後放置されていけば、食料問題はますます激化していく
だろう。そんな事態に思いを馳せば……。
おそらく10年後の外食産業の姿はずいぶんいまとは変わっているかもし
れない。

話を戻そう。

グローバルの化の実相として続けているシリーズの第3回は、食料の最前
線に迫ろうと思う。
この問題は前回も指摘したように、目下、菅内閣が進めようとしている
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)にも大いに重なる問題だ。
なぜこの問題が重大かと言えば、その理由はいくつもあるが、まずもって
グローバル化でもっとも大きな問題になるであろう要因が何かと言えば、最
後に寄せられるのは食料と資源だからだ。

日本は少子高齢化と非婚化などで人口が減少していく状況だが、世界では
まったく状況が異なる。2050年には世界の人口は70億人にまで迫るといい、
いまよりも10億人以上人口が増えるとみられている。
そこで問題となるのが食料だ。
これはどう比較しても、原油などの資源よりも重い。
発電量だけならば原発にでも頼ることができるが(ただし、原発は運転し
はじめると発電量の調整がきかないので、春秋と夏冬では電気消費量が異な
る四季をもつ日本では、発電量に調整がきく火力発電のほうが便利でもある
のだが)、食料は代替が利かない。極端に言えば、エネルギーが多少入らな
くても国民はすぐに死ぬことはないが、食料は入手できなけければ死ぬこと
すらある。

識者の中には、国内にモノがなければ外国で買えばいいという話で終わら
せる人が少なくない。また、グローバルの時代なのだから、産地で豊富なと
ころから供給してもらえば問題ないという意見もしばしば目にする。
だが、それは間違いだ。目の前に電気がなくても、他の手段で生き延びる
ことはできるが、食料がなければ飢えてしまう。誰もが知る真実だ。

ずばり言えば、この先の世界は食料の争奪戦に入っていくということだ。
もちろんそれはいくつかあるうちでも、もっとも悪いシナリオではある。
だが、排除はできないどころか、かなりの蓋然性が高い問題なのだ。
新興国や途上国で人口と可処分所得が高まっていくことは間違いないだ
ろうが、それによって食料も奪い合いとなる。
現在日本の食料自給率は40%弱。供給過多なのはコメくらいだが、小麦
や大豆、トウモロコシといった穀物の多くは輸入に多くを依存している。そ
んな日本で、もし食料価格が高騰した場合、国民の生活に激しく影響が出る
ことは間違いない。

そこで考えねばならないのが、現在菅政権が進めているTPPである。
農水省の試算によれば、もしTPPが発効した場合、海外からの安い農産物
の輸入によって、日本の農業は大きな被害を受け、つまり、市場を奪われ、
食料自給率は14%まで下がると予想されている。
輸入が86%にまで高まった場合、価格が上げられてしまったとき、海外
で価格の圧力に屈しないのは不可能だろう。そうなれば、食料でどれだけ国
民の生活が苦しめられるか、想像は難くない。

もちろんこれらは悪いシナリオであって、現実にどう進むかはわからない。
ただし、さまざまな世界的な統計や見通しから言えば、よいシナリオに転じ
る確率は低く、いま農水省が出している可能性に進むほうが高い。
なぜそう言えるかと言えば、まさに2011年現在でも、世界では食料の争
奪戦がはじまっており、それはわたしたち日本の人たちが知らないところで
おそろしい事態にまで発展しているからだ。

そのリアルな現場がわかる本を紹介するのが、今回の本だ。
『ランドラッシュ』

NHKスペシャルの取材班による同書は、2010年2月に放送された内容と
そこでは描ききれなかったレポートを詳細かつリアルに記したレポートだ。
ロシア、中国、ウクライナ、タンザニアなどの国々を舞台に、取材チーム
は深く取材。銃を携行した警備員が農地をうろつくロシアの現場から、韓国
や中国、インドの人たちが世界各地で土地を獲得しようとしている実態、そ
して、世界の農業市場をグローバルに手中にしている国や組織など、いまの
農地争奪(ランドラッシュ)の姿を鋭い危機感のもとに描き出している。

TPPについては、個々人の判断よりも周囲がなんとなく「それがいいんじ
ゃないの」という空気があるために同意している人が多いだろう。だが、い
ま世界の農地で起きている現実を見ると、そんな曖昧な議論ではなく、きち
んとしたデータやつらい現実を目視しなければいけないのだということがわ
かってくるだろう。そして、二国間の協議ならともかく、TPPという包括協
議はほんとうに日本の金融資産が奪われるだけの狙いになっていることもま
た見えてくるはずだ。

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