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2011_01_11「2030年の未来 その2 新技術はどこまで実現可能か」

2011年01月11日 · 未分類

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 森 健の『ニュースを解く読書』
     — Dive Into Books with News — 2011/01/11 vol.6

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<< CONTENTS >>
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【1】今週のテーマ >>「2030年の未来 その2 新技術はどこまで実現可能か」
【2】今週の1冊    >>『全予測2030年のニッポン 世界、経済、技術
はこう変わる』
  <書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
  <版元による「内容紹介」の引用>
  <目次>
  <要約>
【3】解説と雑感    >>「技術の産業連関と実現可能性」
【4】おまけ 
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◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
【1】今週のテーマ 「2030年の未来 その2 新技術はどこまで実現可能か」
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 今月は4回にわたって、この少子高齢化と人口減少を睨んだ未来に関して
の特集で、今回はその2回目である。

 ちょうど昨夜のNHK「ニュースウォッチ9」で、英紙Economistの記者が
NHKとの合同取材(というより、NHKが先般話題を呼んだEconomistの記者
に話をしたのだろう)で、長崎の街を訪れたり、仙台に取材していた。
 同誌が大きく扱った「Japan Syndorome」は、少子高齢化と人口減少が
テーマだったが、まさにそれを現場レベルで見るという企画だった。

 三菱重工の長崎造船所の街に入った記者は、中心部から10分ほどの場所
で、すでに地域住民の90%が60歳以上と聞かされ、また、あちこちで放置
された廃屋を見て、驚きを隠せない表情だった。
 市内のデパートの4階5階はすでに閉鎖されており、衣類はほとんど高齢者
向け。配達業務の28歳の若者の給与は13万円で、同棲している彼女とは結
婚はできても子どもはつくれないと嘆いていた。彼女が産休・育休で休んで
しまえば、生活が成り立たないということだった。
 すでに何度も言及されている現象だが、こうして現場レベルでの言葉や実
態が映像で捉えられるインパクトは大きい。
 今夜も続編があるようだが、今後この手の番組は多く増えていくだろう。

 今日の1冊は下記。
 
『全予測2030年のニッポン 世界、経済、技術はこう変わる』
 三菱総合研究所 産業・市場戦略研究本部(2007年2月刊)

 前回の東大の本と比べて、非常に顕著な違いは技術への言及が非常に多い
ことだ。これは三菱総研の狙いでもあるだろうが、技術が次の産業にどのよ
うに影響し、どこに日本が注力すべきかを理解しているからだろう。
 東大の本では、非貿易のローカルな取り組み(それは内需とも異なる社会
的な問題)が中心であったため、生活者の視点がベースだったが、本書では
マクロの問題、とくに次の産業にどうフォーカスしていくかが重要な提案に
なっている。

 また、比較的冒頭の章で安全保障に論を割いているところも、他の本では
あまり見られない特徴だ。グローバル時代になって、経済や貿易のことばか
りに議論がいきがちなのは確かだが、その支えに安全保障やアライアンスと
いった政治的な縛りがあり、その議論を押さえているのも三菱総研らしい視
座のポジショニングである。

 ただし、難点もある。いくつかの章で「未来イメージ」というコラムが設
けられ、そこで将来はこんな風になっている、という小説風の文章があるの
だが、そこはいまひとつ説得力に欠ける。
 どこまでそれらが実現可能なのか、といった材料が弱く、若干技術社会論
的な罠にはまっているためだ。
 また、リーマンショック以前、および民主党への政権交代以前の刊行のた
め、GDPの伸びなどでまだ前向きな数値がとられているところも、いま読む
と若干の疑問符がつくところもある。

 ともあれ、目配りの仕方としては、よくできており、産業ベースで考える
ときの参考になるのが本書だ。
 
※以下はfoomiiでお読みいただければ幸いです。

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foomii_2011_01_03「2030年の未来 その1 半径1キロ前後の未来像」

2011年01月04日 · 未分類

 新しい年があけました。おめでとうございます。
 今年もよろしくお願いします。

 毎年、元旦の新聞は特集が盛りだくさんで年賀状よりも楽しみだったりするが、今年はさっぱりおもしろくなかった。朝日も読売も平時の記事を多少分厚くした程度で、驚くべきところがほとんどなかった。とても残念だった。

 元旦だからというのではなく、新しい10年の始まりなのだから、射程の長い視野からの発見や希望、あるいは警鐘があってしかるべきだと思っていた。だが、そうした未来を見据えた記事は、いくつか小粒のものがあるくらいで、さっぱりとしたものだった。
 こんな並びでいいのだろうかとも思ったし、かりに、それで編集サイドがよいのだと思っているのなら、読者の期待に応えられていないだけでなく、新聞業界自体の劣化が著しく進んでいるということだ。

 次の10年はこれまでの10年や20年とは比較にならない変化が待っているはずだ。
 そのもっとも大きな要因が、少子高齢化と人口減少だ。あらゆる問題がここに帰結すると言ってもいい。
 経済に関しては、中国やインドなど新興国の発展による外的な要因も小さくないが、内需が盛り上がらない現状も踏まえて言えば、やはり少子高齢化と人口減少のほうがインパクトは大きい。

 そこで今月は4回にわたって、この少子高齢化と人口減少を睨んだ未来に関して特集したいと思う。
 前回は『「人口減少経済」の新しい公式』(松谷明彦)を紹介したが、これに続けて、以下の3冊から紹介し、4回目で総説的にまとめたいと思う。

『全予測2030年のニッポン 世界、経済、技術はこう変わる』
 三菱総合研究所産業・市場戦略研究本部(2007年2月刊)

『図解20年後の日本 暮らしはどうなる? 社会はどうなる?』
 ニッセイ基礎研究所(2009年6月刊)

『2030年超高齢未来 「ジェロントロジー」が日本を世界の中心にする』
 東京大学高齢社会総合研究機構(2010年12月刊)

 いずれも描いている未来は同じ2030年であり、そこで使われている統計などは多くは出所が共通している。ただし、そこで述べられている内容は、若干異なる。三菱総研のはエピソード風に未来の描写が描かれるところもあったり、東京大学のは高齢社会の到来を降伏ぎみに受け入れたうえで少々楽観がすぎるくらいに味付けがされている。3者で言えば、一番フラットで網羅的だったのがニッセイ基礎研究所だ。
 いずれも通底しているのは将来に対する危機感で、同じ2030年を目安にしている点で、興味深い。

 今回は先月発売された『2030年超高齢未来 「ジェロントロジー」が日本を世界の中心にする』を紹介する。

※以下はfoomiiでお読みいただければ幸いです。

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12/10(金)世田谷一家殺害事件から10年シンポジウム

2010年12月09日 · 未分類

ミシュカの森2010
 20世紀最後の日、自分が何をしていたのか、はっきりとは覚えていない。おそらく遅れがちだった年賀状に追われていたか、やっていなかった掃除をしていたか。そんなところじゃないかと思う。

 ただ、夜くらいになって見たニュースには少しく身を固くした記憶はある。同じ世田谷区の上祖師谷で起きた一家殺害事件。静かな年末を飾るにはあまりにむごい事件が報道されていた。当時わたしも同じ世田谷の住民。事件の場所からは近くはなかったものの、決して遠い空の話とは思えなかったからだ。

 同事件ではその後の報道にも驚かされた。犯人の行動で不可解で気味の悪いことが次々に判明していったからだ。いったいなぜそんなことを……。当時報道を見ていた人なら、誰でも感じたことだろう。
 その後、犯人の衣類や靴などの情報が警察から断続的に公開されたものの、はかばかしい成果には至らず、10年を迎えようとする現在も犯人は捕まっていない。
 事件に関係のない人にとっては、あれからもう10年なのか、という感想くらいだろうと思う。私自身、その時間の早さに驚くくらいが精一杯だ。

 けれども、事件の遺族にとっては、いまなお事件は決して遠い話ではない。
 唐突に、理由もわからず、ひどい方法で身内を殺され、奪い去られた事実。それは、怒り、悲しみ、混乱、恐怖、喪失感、といった感情を引き起こし、心深くに刻まれる。そして、そんなやり場のない思いを抱えて生きていかなければいけない。
 もちろん日常生活の場面で、そればかりを背負って生きているわけではない。笑いもするし、喜びもある。けれども、事件で受けた傷は確実に存在するし、それを理解されることは多くはない。傷はなくならないが、受け入れていくしかないと腹を括って歩んでいかなければいけない。また、事件解決の運動のためにメディアにでなければいけないこともあるが、そこで誤解を受けることもある。
 犯罪被害の遺族はが抱える問題は、彼らがどのように自身の人生を引き受け、またどのように社会を受け入れるかという自身の問題でもある一方で、社会が彼らをどのように受け入れられるかという社会の問題にもなっている。
 そんな考えは、世田谷一家殺害事件で被害者の宮沢泰子さんの姉である入江杏さんに会って気付かされたことだった。

 明日12月10日(金)18時〜21時、成城学園の成城ホールで世田谷一家殺害事件から10年を追悼する「ミシュカの森2010」が行われる。
 同追悼イベントは二部構成になっており、18時〜19時20分の第一部では、大阪池田小事件(2001年)のご遺族の方が参加した歌や朗読があり、第二部では各界の方を招いたシンポジウム「苦しみ・悲嘆から社会へ」が予定されている。私は入江さんとの縁あって、同シンポジウムの司会をさせてもらうことになった。
 ボーナス週の金曜で、忘年会なども多いと思うけれど、犯罪被害者の遺族とはどういうもので、当人や社会はそれをどう乗り越えていくべきなのか、すこしでも関心のある方は参加してもらえたらと思う(入場無料です)。
 

12/10(金)世田谷一家殺害事件から10年シンポジウム はコメントを受け付けていません。タグ :

foomii創刊号全文公開「『レアメタル資源争奪戦』を読み解く」

2010年12月08日 · 未分類

12月6日配信の会員制メールマガジン「森健の『ニュースを解く読書』Dive Into Books with News」で書き下ろした「『レアメタル資源争奪戦』を読み解く」を創刊記念として全文公開します。

ちょっと長めですが、レアメタル争奪戦の本質を知ることで、話題に事欠かない『東アジア情勢の今』を読み解いてもらえれば。

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森 健の『ニュースを解く読書』
— Dive Into Books with News — 2010/12/06 vol.1

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<< CONTENTS >>
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【1】ごあいさつ  >> 「未熟なアジア」
【2】今週のテーマ >> レアアース
【3】今週の1冊  >> 『レアメタル資源争奪戦』中村繁夫
<書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
<版元による「内容紹介」の引用>
<目次>
<要約>
【4】解説と雑感 >> 「環境問題と加工の利益」
【5】さらにもう1冊  >> 『資源を読む』柴田明夫
<書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
<版元による「内容紹介」の引用>
<一言コメント>
【6】おまけ      >> おもしろ動画
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【1】ごあいさつ    「未熟なアジア」
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尖閣問題、その流出ビデオ、APECと次から次へとアジアの問題ばかり連
日ニュースを騒がせている。
と思ったら、今度は北朝鮮と韓国で武力衝突。

今世紀はアジアの時代という言葉は、もはや何のフックにもならないほど
手垢まみれだけれど、栄華を極めるイメージのわりにはアジアはあまりに未
成熟で混沌としすぎだ。

19世紀から20世紀初頭の欧州は、現時点から見れば内戦や紛争に近い感
覚で国が争った(欧州だけだったのに、World Warと呼んだところに当時の
栄華と自負も感じられる)。その過程では、共産主義国家ができたり、一党
独裁国家ができたりと、壮大な社会実験もあった。
けれども、結果的には、総じて異なる民族や宗派でも相互理解が進んだこ
とがあの2回の戦争の最大の成果だったように思える。大きな共同体維持の
ために、大同小異の判断ができる。そうなれたのは欧州が心理的に成熟した
証しだろう。

そんな欧州と比べると、いまなお何かにつけていがみ合ったり、名誉にこ
だわったり、一党独裁や軍事政権が少なくないアジアは、いまなお国家や地
域共同体のあり方としては甚だ未熟と映る。
アジアがまとまるコンセプトは数々あるものの、実際にはまだそれにはほ
ど遠い。経済だけの連携以外に理解しあえる基盤は何だろうか。
アジアが成熟していくのはいつのことなのだろうか。

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【2】今週のテーマ  「レアアース」
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
昨年の今頃、レアアースについて街中で尋ねたら、どれだけの人が知って
いただろう。
幸か不幸か(いや、明らかに不幸だけど)、尖閣問題の流れで中国がレア
アースの輸出をストップし、それによって日本の経済界が大慌てしたことで
問題が広く知られることになった。

中国によるレアアースの独占が危機を招くという趣旨の記事は、わたしは
今年1月発売の月刊「文藝春秋」で書いた。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungeishunju/bungeishunju1002.htm
同記事は三井物産や住友商事など大手商社から、レアメタルで昨今名高い
アドバンストマテリアルジャパンの中村繁夫氏や同じくレアアースに特化し
た専門商社三徳、あるいはレアアースの一大拠点である中国広東省の共産党
の委員などにも取材してまとめたものだ。

いくつかの本を読んでいれば、レアアースが遠からず中国との間で資源問
題になることは疑いなくわかっていたことだった、
また、それは経産省/資源エネルギー庁の外郭団体であるJOGMEC(独立
行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のレポートでも以前から備蓄や
代替資源の開発について指摘されていた。

にもかかわらず、対処してこなかったのは、価格が上がっても払えばいい
といった安易な認識でいたことが原因だろう。価格が上がるのは需要と供給
で仕方のないこととしても、まったく出ないとなると話は異なる。

だが、中国がレアアースの輸出を絞りだしたのは、単に外交上の圧力とい
うわけでもない。
中国には中国の理由もある。
そうした事情に触れる前に、まずはこのレアアースを巡る状況を整理する
本を読んでおきたい。

最初に紹介するのは、アドバンストマテリアルジャパンの代表、中村繁夫
氏の『レアメタル資源争奪戦』。
発行は2007年2月と、4年近く前だが、ここで触れられている内容は古び
ておらず、すでにこの時点で問題のポイントを言い当てているところに注目
されたい。

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【3】今週の1冊   『レアメタル資源争奪戦』
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<書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
『レアメタル資源争奪戦』 中村繁夫 日刊工業新聞社
1600円
http://amzn.to/daqB6v

<版元による「内容紹介」の引用>
ハイテク製品を支えるレアメタルの安定確保がいま危ない。熾烈なレアメタ
ルビジネスの現場に身を置く”現代の山師”が、技術立国日本を脅かす資源獲
得競争に打ち勝つ道を語る。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中村 繁夫
1947年、京都市生まれ。静岡大学農学部木材工業化学科卒業。同大学大学
院修士課程修了。ブラジル、米国、欧州などを放浪し、帰国後、蝶理(株)入
社。化学品部無機薬品課、機能製品部、機械金属資源本部マテリアル部、石
油部などレアメタル関連部門に30年勤務。中国、ロシア、中央アジアを中
心にレアメタル資源の開発輸入に従事。2003年、蝶理アドバンストマテリ
アル(株)社長に就任。2004年、MBOにより独立しアドバンストマテリアル
ジャパン(株)社長に就任

<目次>
はじめに
推薦のことば 小池百合子
第1章 レアメタルは技術立国日本の生命線
「レアメタル」って何だ!
先端産業から見たレアメタルの用途
レアメタルの市場規模はこの3年間で急拡大
偏在するレアメタル資源分布
資料編1 各種レアメタル資源のフローと国内市場規模
第2章 国際経済を動かすレアメタル
利益なき繁忙のレアメタル供給メーカー
中国に振り回される日本のレアメタル市場
インジウムに見るレアメタルの人為的偏在
新資源ナショナリズムに走る中国、ロシア
79年のミネラルショックを忘れるな
資源サイクルから近未来が見えてくる
レアメタルをめぐる環境の変化と危機の比較
非鉄メジャーから新資源メジャーへの世代交代
長期化する資源問題と活発化するM&Aの関係
世界の資源戦争はこれからどうする
世界各国の資源戦略はどうなっているか
第3章 知られざるレアメタル取引の実態
デジタル革命によるレアメタル産業革命
なぜ価格が短期間に数倍になるのか
価格決定メカニズムはどうなっているのか
レアメタル取引に必勝法はあるのか
気の遠くなるようなレアメタルビジネス
資源ナショナリズムと投機との関係
勝ち組のレアメタルと負け組のレアメタル
レアメタル市況の見方
資料編2 主要レアメタルの価格推移と変動要因
第4章 日本のレアメタル産業勝ち残りへの道
国家規模で海外探鉱を支援せよ
ここまで市況が下がれば国内鉱山の開発も可能だ
日本の国家備蓄制度を見直せ
代替材料の開発は日本の仕事
環境リサイクル分野で産官学共同の技術開発をせよ
中国に負けてたまるか
資源開発は外交力による経済圏構築が必要だ
継続可能な循環型社会を実現するたえの共生思想
国家規模で新技術の開発に集中せよ
おわりに

<要約>

第1章は、レアメタルやレアアースというものの解説だ。元素の周期表に
あるそれぞれの特質をもとに、どのような産業に使われているかが述べられ
る。リチウムイオン電池の正極に添加するリチウムをはじめ、電気自動車の
モーターに添加されるジスプロシウムなど。市場規模は2003年が1.64兆円
だったが、2006年には2.4兆円。ただし、レアアースもレアアースもその
資源国には偏りがある。中国、南アフリカ、旧ソ連諸国、オーストラリア、
カナダなどだ。

第2章はレアメタルやレアアースが、世界の市場でどのような存在になっ
ているかが語られる。
とくに影響が大きいのが中国の資源政策だ。この数年で、国内全域でレ
アメタルの委託加工を原則禁止、輸出還付税の還付率を17%から0%に完
全撤廃、輸出税を15%賦課など厳しい政策転換が行われた。いずれも国家
の五カ年計画で進められた。

ただでさえ、最大貿易国の日本にとって厳しい措置だが、さらに中国は
自国でのレアメタル、レアアースの採掘にとどまらず、海外にまで買い求
め出している。「資源ナショナリズム」の台頭は、国際市況の乱高下を引
き起こしやすい。中国はアフリカでの開発と投資をおそろしい勢いで進め
ている。

第3章では、レアメタルやレアアースの取引の仕組みから解説が始まる。
鉄などのベースメタルと同様、レアメタルもロンドン金属取引所で決まる
が、レアアースは規模が小さいので供給国との相対取引となる。レアメタ
ルでは価格の急激な乱高下があるが、そこには世界的な市場の動向を睨ん
だ投機的な動きもある(高騰するリスクをヘッジするための投機も含む)。

問題はレアアースで、中国が供給国の大半を占め、需要で一番多い国が
日本。「首根っこをつかまれている」状態で、かつ、製造特許も日本発の
ものは期限が切れていたり、中国が米GMから購入したりもしている。
中国との関係において、勝ち組から負け組に転じるおそれがある。

第4章は、以上の現状を踏まえたうえでの、日本のこれからの資源対策に
ついての考察だ。
日本の電子デバイス市場は47兆円、セット機器市場は141兆円だが、そ
こに不可欠なレアメタル、レアアースがなければ工場は動かなくなる。
では、そうした不足した事態に備えて備蓄をしているかと言えば、日本の
予算はわずか186億円。海外の民間企業の探査費用より少ない。

日本はかつて世界有数の非鉄資源国だった。金山、銀山、炭鉱で財閥も
財をなした。だが、いま財閥系商社も探鉱には手を引き、海外から買うこ
とが主流になっている。その結果、日本ではレアメタル等に関して専門家
が極端に減ってしまった。その人材不足も大きい。
備蓄以外にも、代替材料の開発や環境リサイクルは、技術立国日本のお
家芸だろう。そうした面からも、必ずや訪れるだろうレアメタル危機に備
えておかねばならない。

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【4】解説と雑感 「環境問題と加工の利益」
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尖閣後のレアアース輸出停止に際して、テレビや新聞で語られたことは、
上記の中村氏の著書で書かれたこととほとんど同じだった。そこに中国報道
官の話、商社などのコメントが挟まれるくらいが違いであって、概要と経緯、
問題点と改善策などは、すべてなぞらえたものと言ってもいいほどだ。

本書には30年以上、レアメタルやレアアースの貿易に携わってきた中村氏
の知識と知恵が詰められているが、いまのレアアース問題に関しても、その
源流の「なぜ?」につながる重要な指摘がいくつか含まれている。

レアアースの世界埋蔵分布で言えば、中国は3割ほど。なのに、実際の供給
の9割以上になっているのはなぜか。前提にあるのは価格だ。かつては米国で
も採掘されていたのに、中国が安い価格で出してきたことで競争力を失い、
閉山していった。
では、なぜ価格が安いのか。
そりゃ中国だもの、という答えではザックリすぎる。答えは、放射能処理
で大変なコストがかかるものを、中国ではその処理にコストをかけていない
からだ。

端的に言えば、レアアースは放射能を含む元素でできている。そのため、
精錬していく過程では大量の酸をつかったりもするし、そこで廃棄される物
質はきちんとした処理が欠かせない。だが、中国はほかの産業と同様、荒っ
ぽく産出し、環境汚染も気にせずに供給してきた。だからこそ安かったので
ある。

それはわたしが2009年秋に広東省の共産党委員に取材したときにも、そ
の当人がこぼしていたことだ。彼は、板挟み的な境遇なんです、という意味
のことを話していた。
「地方政府としては、産出できる場所が限られるレアアースはどんどん売っ
ていきたい。だが、政府(党中央)は産出に縛りをかけてくる。一方で、環
境汚染がひどいことも聞いている。事態は改善しなければならないが、いつ
頃どのようにするのかは政府が決める。だから、扱いが難しいんです」
通訳をしてくれたのは、広東省清遠市のホンダの部品をつくる工場の関係
者だったが、彼も自分の聞いている情報もそうだと話していた。

一方で、中国の政府として、日本に圧力をかけたい政治的意図があるのも
事実だろう。
北京に事務所を置くある団体の調査員は、その鍵を握っているのが北京大
学に在籍する4人の教授だと話していた。
「中国は日本に対してレアアースを安く売りすぎた。その利幅を取り返すた
めにも、日本にはもっと高い価格で売るべきだ」
そういう政治的提言を積極的に行い、国務院の工業情報化部に働きかけて
いるということだった(そして、その懸念どおり、日本は輸出停止に遭った
ことからすれば、今後ますます価格は上がるだろう)。

もう一つ中村氏の指摘で重要なのが、中国はレアアースを産出するだけで
はなく、加工して売りたいという意志があることだ。
資源国なら資源だけ売っていればいいと考える国はない。とくに中国はこ
れまで日本やアメリカの加工国として地位を高めてきたが、もっとも付加価
値の高い部分はとってこれなかった。要は組み立て屋だ。それでは利益のお
いしいところはとれない。
そうした苦い経験があるので、レアアースに関しても、単に素材だけ販売
するのでは利幅が薄いことがわかっている(他国と同じものを価格だけで比
べられてしまうため)。しかし、自国のもつ技術で加工して販売できるとな
れば、利幅はぐんと上がる上、さらに産業の根っこを太く押さえることがで
きる。

環境要因と政治的意図と、どちらがどれほど大きいかはわからないが、中
国がレアアースで日本に圧力をかけるのは機会次第であり、その到来を待つ
だけだったのである。
もちろんそれを阻止できなかったのは政治の責任であり、外交上の失敗で
あることは間違いないが、ことレアアースに関しても戦略がなかったことは
本書を読むことでわかるだろう。
危機が起きた今になって、政府は備蓄制度の見直しや代替材料の開発への
取り組み強化を打ち出しはじめているが、商社は数年前から脱中国路線で、
世界で探鉱をはじめている。
一つ思うのは、環境要因での問題でも加工貿易での経済飛躍への戦略でも
どちらも日本の高度経済成長期に起きていたことと同じだということだ。や
はり歴史は繰り返すということなのだろうか。

もう少し、レアメタルを含む日本の資源戦略について知りたい場合は、次
の書籍を読まれるといい。丸紅経済研究所、柴田明夫所長の編著だ。
『資源を読む』
他国の資源戦略がどうなっているのかという広い視点で、概況を知ること
ができるはずだ。

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【5】さらにもう1冊
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<書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
『資源を読む』 柴田明夫・丸紅経済研究所(編著)
860円
日本経済新聞出版社
http://amzn.to/i7VPoG

<版元による「内容紹介」の引用>
資源価格は21世紀に入って高騰し、我々の企業活動や消費活動にも大きな
影響を与えるようになりました。本書では、その後の急落場面も含め、価
格変動の真因に迫ります。新興国の需要が急増する一方で、すぐに増産で
きる体制になっていないため、需給が逼迫しました。投資マネーの流入や、
資源ナショナリズムの高揚などがさらに事情を複雑にしました。今後の日
本のとるべき戦略として、ロシアやアフリカとの提携の可能性や、総合商
社の取り組みについて記述しました。20世紀型の成長モデルは終わりを迎
え、低炭素社会の構築による持続可能な成長モデルが模索されており、今
後の資源市場のあり方についても解説しています。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
柴田 明夫
丸紅経済研究所所長。1976年東京大学農学部卒業後、丸紅に入社。鉄鋼
第一本部、調査部などを経て、01年丸紅経済研究所主席研究員。06年か
ら現職。農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」、「国際食料問題研
究会」、「資源経済委員会」等の委員を歴任

<一言コメント>
柴田氏にも取材させてもらったことがあるが、中国の政治的な流れや事
情を詳しく押さえており、さすがと感心した覚えがある。中国共産党の中
枢にいる人事的な情報もきめ細かく追っており、執行部の誰がどの大学で
何の研究をしていたか。その結果、資源戦略ではどういう流れができてい
るか……といった概略を教えてもらった。
柴田氏の指摘で印象に残っているのは、中国の指導者層にはかねてより
地学や工学の研究出身者が多く、まさに資源戦略などはお手の物だという
ことだった。
たとえば、要職だけでも紹介すると、下記のような具合だ。
・胡錦濤・国家主席 →清華大学水利工程課
・温家宝・首相 →北京大学地質学院地質構造課
・習近平・国家副主席 →清華大学化学課
・周永康・中央書記処書記 →北京石油学院資源探査

本書はそんな柴田氏が同じ丸紅経済研究所のスタッフとともにまとめた
ものだ。本書での資源は、レアメタルやレアアースだけではないが、化石
燃料から非鉄金属など広く捉えたことで、いまの資源ナショナリズムの現
状が見えてくる。

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【6】おまけ
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AppleTVを購入。
映画を「購入」の場合も、買うのは「権利」だけで、見るときにはその
場で毎回ダウンロードしていくという感じっぽい(IDで管理)。だから「レ
ンタル」も2日間だけの「権利」ということなんだろう。
これなら画質はHDだし、ブルーレイとさほど変わらない。というか、こ
れじゃほんとにブルーレイは不要になっていくかもしれない。
70年代から予期されていたビデオ・オン・デマンドの時代がようやく来た
のかと思うと、ちょっとした感慨も。

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マガジン名 : 森健の『ニュースを解く読書』
— Dive Into Books with News —
発行者 : 森 健(Ken MORI)
ウェブサイト : http://moriken.org/
※本メールに掲載された記事を許可なく転用することを禁止いたします。
Copyright (c) Ken MORI
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会員制メルマガfoomiiでメルマガ「ニュースを解く読書」創刊

2010年12月01日 · 未分類

 師走になりました。あと今年も1ヶ月……。
 早くもろもろ終わらせて、ゆっくり年越しそばでも食べたい気分ですが、そこに辿りつくまでにはまだまだ長いようでもあります。

 最近は10月に出した『ぼくらの就活戦記』(および昨秋出した『就活って何だ』)関連で取材を受けることが多く、細々とコメントなどしています。
 いま出ている号では週刊新潮で、明日発売の週刊文春でも出る予定で、来週にも別の週刊誌で話があります。また、ウェブでは今日Itmediaの「@IT自分戦略研究所」で著書からいくつかケースを転載した連載がはじまりました。
http://lab.jibun.atmarkit.co.jp/entries/1091
 2001年の就職氷河期を上回るひどい採用状況で、2012年採用についてはこれからまさに本番。該当する学生は、焦らずに活動してほしいと思います。
 ともあれ、就活については、別エントリーで思うところを述べようと思いますが、今日はそれとは別のお知らせがあります。

 会員制メールマガジン創刊のご案内です。

 会員制メールマガジンを今月12月から創刊します。
 タイトル、発行日、料金は下記の通り。
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森 健の『ニュースを解く読書』 Dive Into Books with News
【 購読料:840円/月(税込) 発行:毎週 月曜日(第5週を除く) 】
http://foomii.com/00024
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 どんな内容? 下記が概要です。

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デフレ、年金、人口減少、雇用、外交事案……。日々、話題となる社会事象は複雑かつ急速に過ぎていく。ウェブに流れるストレートニュースは速報性には優れているが、問題の本質や実態をつかむにはあまり向いていない。
そんなとき、膨大なウェブ情報を何十時間追いかけるより、一冊ないしは数冊の書籍を読んだほうがはるかに理解が深まることがある。また、本では、根拠の乏しい情報に振り回されず、確かな情報を得られることがある。専門的に深掘りした情報は、対時間や価格のパフォーマンスではるかにすぐれていることが少なくないのだ。
そんな経験に基づき、当メルマガでは、折々の社会事象を深く掘り下げる一助としての書籍を折々のニュースに寄り添いながら紹介していく。また、そこでは筆者の日頃の取材経験も含めた視点も入れていく予定である。
要は、書籍を通して事象やニュースを解説・分析していくのが本メルマガの趣旨である。
これまで鋭い見識をもった人物への取材経験は少なくないが、そうした人が「仕事術」のような本は読んでいた試しがない。多くは大量の本を読み、多くの人に会う中で積み上げてきた知見だ。
そんな知見をすぐに筆者ももてるとは思っていないが、少しでも現実のファクトや新たな視点を得ていきたいと思っているし、本メルマガを通じてそんな体験を書籍、そして読者とともに歩んでいければと思っている。
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 なぜこういうテーマで会員制メルマガをはじめようと思ったのかについては、サンプル号の「ごあいさつ」に少し長めで書いておきました。
 もし興味があれば、覗いてみてください。
 サンプルはこちら
http://foomii.com/00024/sample

 このfoomiiは、今春まで「まぐまぐ」に在籍し、同社の会員制サービスを立ち上げ、軌道に乗せていったスタッフ=鈴木創介さんらが立ち上げた会社です。foomiiとは「ふみ」をベースにネーミングしたのだとか。設立の趣旨や方向性など話をしたとろ、信頼できそうな方でした。
 すでに発行している方たちは、著名かつキャラも濃そうなベテランが少なくありませんが、こちらもできるだけ埋もれないよう、読んでおもしろい、あるいは、トクした(?)気持ちになれるものは出していきたいと思っています。
 サンプルとは別に、創刊号もすべて無料で掲載する予定ですので、その辺も踏まえて、購読を検討していただけるとうれしい限りです。

 ぜひとも、購読をご検討のほど、よろしくお願いいたします。

foomiiからの手続きの案内は下記
—————————————-
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『ぼくらの就活戦記』発売

2010年10月26日 · 自著

「ぼくらの就活戦記」10月20日に『ぼくらの就活戦記 難関企業内定者40人の証言』(文春新書)が発売されました。
タイトルの通り、内定をとった学生やすでに入社している新人社員など15社、40人の就職活動の体験談集です。
昨秋上梓した『就活って何だ 人事部長から学生へ』(文春新書)という本は、人気企業の人事部長が、自社の新卒採用選考における選考過程や人の見方などを解説したうえで、就職とは、働くとはどういうことかを語るという「採る側」の意図を明らかにした企画でした。
今作『ぼくらの就活戦記』は「採られた」側の話です。

既出の報道の通り、現在の新卒採用は以前の「就職氷河期」と同様、非常に厳しい状況です。新卒の有効求人倍率は2009年春の2010年入社で約25%減、今春の2011年入社の採用でもさらに微減。学生の中には、50社、70社と数多くエントリーをし、夏になっても就職先が決まっていないという人も少なくありません。
ところが、取材で学生に話を聞いてみると、厳しいという声がある一方で、複数の内定をとっている人も少なくありませんでした。
大手電機とメガバンク、商社と投資銀行、大手損保と外資系金融……。有名大卒でも採用に至らない学生がいる一方、就職氷河期などどこ吹く風で複数の内定を勝ち得ている学生もいる。
彼らはなぜ内定をとれたのか。彼らはどんな就職活動をし、なぜ内定に至ることになったのか。
そんな疑問を解消すべく、人気企業15社に協力を依頼し、内定学生ないしは入社1~3年目の若手社員に話を聞かせてもらうことにしました。

JTB、東海旅客鉄道、三菱東京UFJ銀行、明治製菓、東京海上日動火災保険、伊藤忠商事、テレビ朝日、ソニー、キリンビール、東レ、ベネッセ、スズキ、NTTドコモ、電通、ゴールドマン・サックス。

上記15社から一社あたり2~3名登場いただき、自身の就職活動を詳細に語ってもらいました。それまでどのような人生を送ってきて、どのように就職活動をはじめ、どのように社会や会社のことを考え、最後にはなぜその就職先を選ぶことにしたか。
そうしたディテールをつぶさに聞き取り、まとめたのが本書です。
ただし、本書は「ただの体験談集」ではありません。
同15社の若手のインタビューのあとには、人事担当者のインタビューも併録しており、登場した若者たちが、なぜ採用内定に至ったのか、その理由の一端を尋ねています。
つまり、「採られた」側の活動がわかると同時に、彼らを「採った」側の視点も併記しているのです。そうすることで、内定に至る表裏両面を描きだそうとしたのが本書の狙いでもあります。

言うまでもないことですが、就職と採用の関係性には決定的な「正解」などなく、お互いの相性や運などによって決まる部分も多々あります。いや、むしろ、そうした面のほうが大きいと言ってもいいでしょう。
さはさりながら、彼ら「先輩」の活動、彼らがその過程で抱いた考えには、ある種、共通性があったのも確かです。それらはごく一部分、筆者が最後のまとめに記しましたが、多くは読者自身が広く読み通す中で、見つけていけるものと思います。言ってみれば、「読むOB訪問」的な役割もあるように思います。

あらかじめ断っておけば、とくに「こうすればこうなる」といったマニュアル的な指導は本書にはありません。自己分析などの専門書を求める方は、そうした書籍を探してください。
けれども、「先輩」が経てきた体験には、活動のヒントが豊富に含まれています。
それらを自分の頭で探しながら、読んでもらえたらというのが、取材者の願いです。
これから就職活動に励まれる方は、ぜひ書店で手にとってみてください。よろしくお願いいたします。

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「脳にいい本、悪い本」座談会講演@紀伊國屋サザンシアター

2010年06月24日 · メディア, 未分類

紀伊國屋サザンセミナー「脳にいい本、悪い本」 一時期より減ったとはいえ、いまだ「脳」とつく本は数多く出ています。今年だけでも半年ですでに約270冊が刊行。一過性のブームというより、定番になったということなんでしょう。
 拙著『脳にいい本だけを読みなさい!』でも触れたけれど、昨年来そんな「脳ブーム」に対する批判や異論が多く目立つようになってきました。
 ともあれ、いったいなぜこんなに「脳」とつく本が多いのか、その理由ははっきりしません。また、玉石混淆の本があふれるなか、どういう本を読めばいいのか、その選択自体わかりにくい。拙著でもそのあたりは取材や推論とともに書きましたが、ほかにもさまざま意見はあることでしょう。
 というわけで、そんなあふれる「脳の本」に関して、斯界の方々と一緒に座談会的に話をすることになりました。
 場所は「紀伊國屋書店サザンシアター」、6月29日(火)19時から。
「第69回 紀伊國屋サザンセミナー 『脳にいい本、悪い本』—「脳の本」数千冊の結論」

 詳しくは、リンク先の通りですが、あらためて登壇者のご紹介だけしておきます(そんな必要はないと思いますが)。

・林成之さん──『脳に悪い7つの習慣』や『<勝負脳>の鍛え方』で知られる、日本大学総合科学研究科教授です。昨今は上記の脳と生き方な伝道師として有名ですが、もともと林さんは高名な脳外科医であって、「脳低温療法」で世界的にも知られている方です。私自身、10年ほど前、その件で取材させてもらったことがあります。でも、なぜ林さんはそうした外科的な医療から離れて、生き方を語るようになったのか。そんな疑問も尋ねたいと思います。

・香山リカさん──最近は大ヒット本『しがみつかない生き方』などで取り上げられることが多い香山さんですが、現役の精神科医でもあり、脳に関して言えば病気を治療する立場で長く関わってきた方でもあります。実際、私も取材で香山さんの臨床からの話で驚かされたことがいくつもあり、また、脳ブームのおかしさについても早くから気づかれていたようでした。

・河野哲也さん──『暴走する脳科学』の著者で、社会における脳科学を哲学の立場から鋭く論じられている立教大学文学部教授です。脳科学を哲学的な視点で見るのは、デカルト以来、繰り返されていることですが、17世紀と異なり、いまの脳科学は高度に人や社会につながっていることでもあります。そんな現代における脳科学の変化、ありようを冷静に見ている河野さんの視点は、非常に刺激的です。

 研究ドメインも「脳」に関する立場も異なるお三方なので、出てくるイシューもまた立ち位置は異なるものだと思います。私自身、彼らからどんな話をうかがえるのか楽しみでもあり。
 お時間のある方はぜひご参加ください。きっと刺激的な、それこそ、脳にいい話を聞けると思います。

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『脳にいい本だけを読みなさい!──「脳の本」数千冊の結論』

2010年02月16日 · 自著

このたび、2 月19 日(金)に光文社より『脳にいい本だけを読みなさい!──「脳の本」数千冊の結論』という本を上梓することになりましたので、ご案内させていただきます。

多くの方がお気づきと思いますが、この数年「脳」を書名に冠する本が爆発的に増えています。「脳にいい~」「脳を活性化する~」と効能を謳うものをはじめ、「成功脳」「勝負脳」など「〇〇脳」というものも多数。書店を歩けばいたるところで「脳」の文字を発見できます。

なぜこんなに「脳」が増えているんだろう?

そう疑問を思った方は少なくないはずです。私自身もそうでした。

仕事上の要請と個人的な関心から、もともと脳に関する本はかなり多く読んできていました。さりながら、昨今ベストセラーになるような本にはあまり手を伸ばしていませんでした。パッケージからしてどこか信憑性に疑いがありそうなものもあり、そうした本にはあまり関心を払っていなかったのです。
しかし、ベストセラーを見れば、いくつも「脳」の本がランクインする。視線をテレビに向ければ、やたらと「脳」クイズ番組がはやり、そこに脳科学者が出演することも少なくない。
DS「脳トレ」は言うまでもないことですが、どうも尋常ではない脳ブームであることは間違いありません。

これはいったいどういうことが起きているのだろうか──。
そんな疑問から、大量の「脳の本」を読んでみるとともに、年間数百点という「脳の本」がつくられ、読まれている現状を取材。合わせて、そんな「脳の本」で言及されている論点や真偽、ミスリードのある「脳の本」の問題などについても述べたのが本書です。

タイトルは有名なヒット本をもじったものですが、(その本を科学書と認定するかは別として)これまで科学書と誤認して、あやしい「脳の本」を買っていた読者層にもぜひ届けられればと願ってつけられた書名です。
また、そんな意図から、本書では当方のアイデアで、ページ下段を書評として101 冊の「脳の本」も紹介してみました。なかには読み通すのが苦痛だったり、読みながら苦笑したりする本もありましたが、一時期に玉石混淆の「脳の本」を大量に読んだのは、ある意味非常におもしろい体験でもありました。これまで発刊されてきた「脳の本」すべてを扱うことはできませんが、多様に広がる「脳の本」の羅針盤的一助になればと思って付記したものです。

時代的な流れからすると、まだこれからも「脳」への関心は高く維持されるだろうと思います。
では、そんな「脳の本」をどう捉えるべきなのか、どうつきあうべきなのか。
そんな意図のもとに書いたのが本書です。
もし筆者と同じような疑問をお持ちになったことがある方ならぜひ、もしくは、1冊でも「脳」に関連した本を買ったことがある人ならぜひ一度読んでいただけたらと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

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『就活って何だ—-人事部長から学生へ』

2010年02月15日 · 自著

学生の就職活動/企業の採用活動が佳境に入りつつある。昨年春の採用は約25%採用数が減少という事態となり、前年までの売り手市場から一転、就職氷河期の再来となった。だが、この春の採用は、昨年以上に厳しいものになりそうだ。

昨年の採用減では、一昨年秋のリーマンショックによる景気後退が主たる要因だとみなされた。米国の消費の落ち込みに端を発する景況の悪化。前年までのような好況に根ざした採用計画は難しい。それが昨年の背景だった。
だが、この春の厳しさは昨年とは性質が異なるようだ。一言で言えば、日本経済の構造的な変化。それが根っこだ。
2つの要因がある。ひとつは中国など新興国の隆盛を含めた新しい経済環境のための事業戦略の見直し。もう一つは、少子高齢化/人口減少とデフレという日本の社会・経済環境。この二大要因に対処すべく、各企業は人事・採用計画を見直しつつあり、それが採用計画にも表れている。

それは消費動向を見ても明らかだ。たとえば小売。
百貨店は凋落に歯止めをかけられず、長く右肩上がりだったコンビニ業界ですら急激にブレーキがかかっている。伸びているのは、人件費があまりかからない通販か、ユニクロなど製造直販だ。この変化が小売流通の世界だけで閉じているわけもなく、当然取引先=メーカーサイドにも表れる。
これまで百貨店、GMS(スーパーマーケット)、コンビニと分けていた営業担当があるとすれば、店舗が減った分、まとめて複数の小売を担わせて営業人員を削ることができる。一方で、伸びている通信販売などのチャネルがあれば、そちらのほうに宣伝やPRを仕掛ける人的配置をとる。要は、モノの出口に変化があれば、それを送り出す側の人員計画にも変化が出るということだ。
これが新興国対応となれば、マーケティングなり、販売チャネルなり、宣伝手法なり、合弁のカウンターパートとの対応なり、その人的資源の戦略は変わってくる。
一人採用するということは、年間数百万円、終身雇用であれば数億円の投資を意味する。であれば、そのコストに見合うリターンを生み出せる人材を精査することは必然だろう。

学生側もそんな時代の変化はある程度は感じているかもしれないが、企業側の感覚との彼我はあまりに大きい。そう思うと、単に採用数が絞られるだけでなく、いまの大学生のおかれた環境に同情を禁じ得ない。なにしろ自分が学生の頃はバブル真っ最中であり、厳しい経済環境でもなければ、先の見えない変化におかれていたわけでもなかったからだ。

昨秋に出した『就活って何だ』という本は、JR東海、三菱東京UFJ銀行、 三井物産、資生堂、全日空、サントリーなど人気企業15社の人事部長に、採用のあれこれを尋ねて構成したものだ。そこで語られた話は、これから面接を受けようとする学生には少なからず役に立つものと思う。どの企業の人にも少なくとも2時間、人によっては3時間以上、採用についてあれこれとしつこく尋ねたものを圧縮している(いわばこちらが人事部長に深掘りさせてもらった)。ただ、そこで語られた人物像は、どの会社も遠く離れているわけではない。詳しくは自分で読み取ってもらうしかないが、自分の頭で考え、動き、ガッツがあるといった普遍的な要素は、どの会社でも共通しているのだ。
「就活」というイベントのような略語にはいまも馴染めないが、厳しい採用環境の中、本書が少しでも学生の方々の助けになればと思う。

文春新書の特設サイトはこちら(数名は動画インタビューもあります)。

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Hello world!

2010年02月08日 · 未分類

WordPressを設置し、サイトを更新しました。

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